サーチュイン遺伝子
先日、NHKスペシャルで寿命をどうやって延ばすかのついてのドキュメントを見ました。
その内容はと言いますと、ある特定の遺伝子を働かせることで寿命を延ばすことができるというものでした。
その遺伝子とは「サーチュイン遺伝子」です。
初めて聞く名前でしたが、この遺伝子が発見されたのは2009年のことなので、無理もありません。
この耳慣れない遺伝子は、全ての人が持っており、また、普段は休眠状態になっているそうです。
ですが、ひとたび「あること」を行えば、この遺伝子にスイッチを入れることができることが分かってきました。
この「あること」とは・・・
番組では、二種類の猿の長期間に及ぶ比較実験の結果を紹介していました。
二匹とも24歳(人間で言えば70歳ぐらい)の猿ですが、一方の猿は至るところから毛が抜け、皮膚はたるんで顔には皺があったのに対し、もう一方の猿はというとそれらの症状が一切無い、若々しい猿となっており、同年齢とはとても思えないほど見た目が違っていました。
なにが原因で、このような見た目の違いを作ったのでしょう?
原因は餌にありました。
実験では二匹に同じ餌を24年間与え続けていたのですが、老け猿は十分な量の餌を与えていたのに対し、若々しい猿はというと、その量を30%ほど減らして与えていたというのです。
どうやら腹八分目ならぬ、「腹七分目」に秘密がありそうです。
老化の最大の原因は、ミトコンドリアと免疫細胞の老化の影響が大きいと言われています。
つまり、これを防ぐことで老化の進行を遅らすことが出来る訳です。
通常、ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを生産していますが、このミトコンドリアが老化すると活性酸素を放出するようになるといわれています。
また、免疫細胞も通常なら病原菌を攻撃するのですが、老化すると敵と味方が判別しにくくなり、正常な細胞も攻撃するようになってきます。
しかし、サーチュイン遺伝子が活性化していれば、活性酸素を消したり、免疫細胞をおとなしくさせたりすることが出来るのです。
それだけではありません。
血管の老化を改善する、傷ついた遺伝子を修復する、インスリンの働きをスムースにする、といったように100種類にものぼる老化の原因を抑える働きがあることが分かってきました。
そしてこの遺伝子は、ある程度飢餓状態であったほうが、活性化するのです。
結局、先の猿の見た目の違いを生んだのはサーチュイン遺伝子の活性化の違いにあったことになります。
人類に限らずほとんど全ての生き物の歴史を紐解くと、そのほとんどが飢餓との戦いでした。
最も厳しい時期であったと思われる氷河期も、なんとか乗り越えました。
しかし、そういう極限の状況下でも生きながらえることができたのは、そういう環境に適応できるよう進化してきたからに他なりません。
そんななかで突然変異的にサーチュイン遺伝子が生まれたのではないでしょうか。
農耕社会の発達により、飢餓状態からはある程度解放されたかのような人類。
もはや役目を終えたのかもしれないサーチュイン遺伝子ですが、それを今また活性化させることで、若々しく寿命を延ばせることが現在分かりつつあります。
この遺伝子の研究には目が離せません。
さらなる発見を期待したいところです。