「イースト」と「パン酵母」のちがいは!?
デリコは、お客様の表示作成のお手伝いをさせて頂いています。
具体的な内容としては、一括表示作成の代行や、原材料表示部分のの表現方法のアドバイス等があります。
そんな中でお客様から先日、このようなご相談がありました。
『パンの一括表示を作成しているが、市販品を見てると【イースト】、【パン酵母】って表示があるけど、うちの場合はどちらが正しいのか?』といったものです。
皆さんは、この【イースト】と【パン酵母】の表現の違いはわかるでしょうか?
結論から言いますと、全く同じものです。では、何故このように表現が異なっているのか?
今回はこの辺りをご説明したいと思います。
一般的にパンを作る時には「イースト」を使用します。が、数年前からこのイーストに変わり「天然酵母」と呼ばれるものを使用するパンが増加していました。
当時の「天然酵母」のウリは、もちろん通常のパンとは異なる食感、風味といった所もありましたが、それとは別に「天然」だから「ヘルシー、安全」である、といったアピールで売り出されたことです。
「天然」というと確かに何の加工も加えていない、自然に存在するようなものを使用しているイメージがありますが、ここで疑問です。
「天然酵母」が存在するのであれば、その逆も存在することになります。
それは何になるのでしょうか??
「天然」の反対語となると、「人工」、「合成」といった言葉があげられます。
ここで上記にあげた「イースト」があげられた訳です。
ただ、「イースト」そのものは数ある天然に存在する酵母の中で、パンの発酵に適した酵母のみを抽出し、それだけを純粋に培養したものです。
ですので、本質的には「天然酵母」と違いがありません。
(天然酵母は、このパンに適した酵母以外の乳酸菌等の微生物も同時に培養されています。)
しかし、「イースト」という表現は人工的なイメージがどうもあるようで、消費者に対して「イースト」と「天然酵母」の商品について安全性に関する意識調査をした所、「天然酵母」の方が安全である、という認識が20%も多くなるような結果もありました。
どうしても、「イースト」という表現が一部の消費者には安全ではない、といった認識を生んでしまっていたようです。
(実際に当時は、「天然酵母」は安全、「イースト」は安全ではない、というインターネットのサイトも数多くあったようです。)
そういった消費者の考えもあることから、「イースト」という表現をやめて、「パン酵母」と表示するメーカーが増加してきているのです。
ちなみに「イースト」は「酵母」の英訳です。パンを作る方や業界の人は普通にその言葉を慣用的に使用し、日本語のように使っています。
しかし、輸入品のドライイースト等の成分等を見ていると、【Natural Yeast】が【天然酵母】と成分や説明文で訳されているのに、原材料部分ではそれが【イースト】になっているといった少し可笑しな状況もおきてはいるんですよね…。
なお、話が戻りますが「天然酵母」に関してはその定義が明確ではないことから、「社団法人日本パン技術研究所」において[天然酵母表示問題に関する見解]というものが発表されました。
その中で「生き物である酵母に『天然』、『人工』といった定義をつけることはできないので、『天然酵母』と表示したり強調する言葉は不適切である」、「天然酵母という表現は不適切になるので、表現するのであれば『発酵種』が望ましい』といった事が発表されました。
この発表があったこともあり、現在では「天然酵母」を使用したパンは定着はしているものの、以前のような過剰に「イースト」と比較して体に良い、といったような表現は減り、適切な表現の商品が増えてきています。
実際には、以前と変わらない表現をしている所もあるのは事実ですが…。
この[天然酵母表示問題に関する見解]はまだ、URLとして残っておりますので、記載しておきます。
ボリュームはありますが、お時間のある時に目を通してみてはいかかでしょうか。
http://www.panstory.jp/fQ&A/tennenkobohyoji.pdf
デリコではこういった表示に関する相談も受けております。