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ゲノム編集技術応用食品の表示

category : メールマガジン2020 2020.1.31 

新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申しげます。

さて、昨年9月に消費者庁からアーモンドが特定原材料に準ずるものに追加されることとゲノム編集技術応用食品(ゲノム編集食品)の表示について「食品表示基準Q&A」の一部改正の通知がありました。
アーモンドの表示については慌ただしく対応されていますが、ゲノム編集食品の表示に関しては現在のところ全く動きがありません。
その表示は遺伝子組み換え食品として表示する場合と、表示義務がない場合に分かれてます。
遺伝子組換え食品表示制度の対象となるのは、ゲノム編集技術により外来遺伝子が除去されていないものです。
遺伝子を切っただけのものについては、自然に起こる突然変異や従来の品種改良によるものと科学的に区別がつかないという理由から、その対象外とされ、安全性審査がなく表示と届出が任意です。
現在開発されているものの多くは後者のため、それらが流通しているかどうかも分からず、いつのまにか食べていることになるかもしれません。
そのため、消費者団体等から遺伝子組換え食品と同様に、安全性審査や表示義務がなくてよいのか、消費者に選択する権利はないのかといったことが言われています。
遺伝子組換え食品は、1996年に商業栽培が開始されて以来20年以上の間に、世界各国の栽培面積は右肩上がりで増え続けています。
その大半が害虫抵抗性や除草剤耐性のある農作物で、これまでに世界の経済や食糧に大きな貢献があり、また、人の健康に対する影響はありませんでした。
しかし、安全性に関する論争は続いており、アメリカでは、遺伝子組換え食品に表示義務はありませんでしたが、消費者からの表示を求める運動を反映して、2022年から全米バイオ工学食品情報公開法により表示が義務化されます。
遺伝子組換え食品の輸入消費大国である日本では、安全性評価をして安全性を確認したもののみが流通することになっおり表示義務もあります。
そのまま食卓に上る食品としては使用されず、家畜の飼料・油・液糖などの原料として使用されているため、あまり抵抗感がありません。
2011年にウイルス抵抗性パパイヤが、日本で初めて生で食べる遺伝子組み換え食品として輸入販売が許可されていますが、数か月販売されていただけで現在は販売されていません。
世界で最も遺伝子組み換え作物の商業栽培が盛んなアメリカでも、直接食べる食品として販売されているものは、果肉がピンク色のパイナップルが2016年に、傷がついても褐変しにくいリンゴが2017年に販売されるなどごくわずかです。
農作物以外では、2倍の速さで成長するサケが2017年からカナダで販売されているのみです。
それに対して、ゲノム編集食品は、ここ数年で急速に進歩した技術によるもので、それを可能にした革命的な手法の開発者がノーベル賞の最有力候補と言われています。
その技術による食品の研究開発が世界中で行われており、農業、養殖業、畜産業の品種改良が格段に進むと言われています。
これまで遺伝子組み換え作物を商業栽培してこなかった日本においても、直接食べる食品となる農作物や水産物の研究開発が行われています。
それらが、自然に起こる突然変異や従来の品種改良によるものと同じだと言われると、少し違和感があるものもありますが、安全性審査も表示義務も必要なければ、商品化する期間が短くて済み、消費者から敬遠されることもありません。
このまま法改正されなければ、規制の厳しい遺伝子組換え食品ではできなかったことが実現されると思います。
アメリカでは一昨年からゲノム編集された高オレイン酸大豆が商業栽培されています。
その大豆から作られた大豆油が世界初の商業販売されたゲノム編集食品として昨年2月に販売されています。
ゲノム編集技術は食品だけでなく医療など様々な分野に応用されています。
ノーベル賞候補と言われる開発者の一人は、この技術は原子力と同様で、生物兵器に利用される危険性があると言っており、もう一人はヒト生殖細胞のゲノム編集は5年間停止し、その間に国際的議論をしてルールをつくるべきと声明を発表しています。
今後ゲノム編集によって、核兵器を凌ぐ生物兵器やゲノム編集人間が誕生するのか、食品業界だけでなく世界がどう変わるのか興味深いと感じました。

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