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食に関する映画

category : メールマガジン2019 2019.3.31 

もうすぐ春になりますが、春の季節となると様々な映画賞の発表の場でもあります。
恒例の日本アカデミー賞では、カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した『万引き家族』が作品賞を受賞しました。
そして助演女優賞では、昨年亡くなられた樹木希林さんが「万引き家族」の演技で受賞しました。
樹木さんは他の映画賞でも受賞しており、ほぼ総なめといった感じです。
本当に心からご冥福をお祈りします。

樹木さんは若いころから独特の存在感を放っておられましたが、老齢になってからより輝きを増した稀有な女優さんで、各方面から引っ張りだこでした。
樹木さんは多数の作品に出演していますが、個人的に好きなのが『あん』(2015年日・仏・独)という映画です。
この作品では、永瀬正敏さん演じるどら焼き屋の店長と樹木さん演じるあん職人の交流を描いています。
樹木さんが早起きして細かい音も聞き漏らさず愛情を込めてあんを作る姿は見どころのひとつで、あん作りがいかに難しい作業なのかが丁寧に描かれています。
樹木さん演じる女性は、かつてハンセン病を患って隔離されたことがあるという設定のため、映画は残念ながらハッピーエンドというわけではありません。
全てを悟ってどら焼き屋を去るシーンは、樹木さんらしい名演技を見せてくれます。
良い映画なので、和菓子にたずさわっておられる方には見ていただきたいです。

それ以外にも、食に関する映画がないかと掘り起こしましたので、以下にオススメの映画を列挙します。

『家族ゲーム』(1983年日本)
この映画は食を取り上げているわけではありませんが、とにかく食事のシーンが多く、食事の音がかなり強調されているのが印象的だったので取り上げました。
めざしをかじる音、たくあんを噛む音、お茶をすする音・・・
他人が聞くと嫌悪感のある音ですが、これらの音を聞いていると不思議と食欲が湧きます。
監督は今は亡き森田芳光さん。
その後の日本社会を予見したかのような乾いた人間関係をおもしろおかしく描いています。
また、この映画では音楽が一切使用されていません。
それが乾いた映像の中で、ことさら食事の音が強調されるという効果も生みだしています。
そしてなんといっても一番の見どころが目玉焼きの食べ方です。
見終わってから、この食べ方をマネしたくなるのではないでしょうか。

『タンポポ』(1985年日本)
上記の「家族ゲーム」で父親役を演じていた伊丹十三さんが監督した映画です。
伊丹さんはグルメで知られており、ラーメンも大好きだったので、この映画を作ったのでしょう。
この映画は、女手一つで切り盛りする人気のないラーメン屋を、ふらりと立ち寄った長距離ドライバーが立て直し、去っていくといった話で、どことなく西部劇『シェーン』を連想させます。
スポコンよろしく店を立て直すシーンよりも、個人的にオススメなのが冒頭のラーメン道を極めた老人がうんちくをいいながらラーメンを食べるシーンです。
そんな食べ方はしないだろ、とツッコミを入れたくなりますが、話術が巧みなのでついつい引き込まれます。
おそらく伊丹さん本人のラーメンうんちくがそのまま表現されているのでしょう。
この映画をみたら、皆さんもきっとラーメンを食べたくなるに違いありません。

『バベットの晩餐会』(1987年デンマーク)
同年のアカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞した作品です。
話は至ってシンプル。
老姉妹や村人たちにお世話になった女性が高級フランス料理をふるまうといった話で、どことなく「鶴の恩返し」を連想させる内容です。
食べたことのない高級フランス料理を皆がおっかなびっくりしながら食べるシーンは微笑ましくもあります。
人はおいしいものを食べると幸福になれる、そして人には優しくなれるといったことを、見終わってから感じていただけると思います。

『幸せのレシピ』(2007年米)・『マーサの幸せレシピ』(2001年独)
沢山の映画が製作されるハリウッドでも、モノになりそうなシナリオは不足ぎみのようで、それを補うために質のよい外国映画をリメイクする例がしばしば見られます。
『幸せのレシピ』がハリウッドのリメイク版で『マーサの幸せレシピ』がオリジナル版になりますが、リメイク版のほうが有名なのでこちらを見られている方が多いと思います。
リメイク版はハリウッド映画にしては珍しく、オリジナル版に忠実に作られており、両作品の差異はあまりありません。
しかし、色合いはかなり違ったものとなっています。
リメイク版が赤や黄といった温かみのある映像であるのに対し、オリジナル版は少し暗めの薄い青を基調にしています。
オリジナル版とリメイク版を見比べるのが映画の楽しみ方のひとつですので、皆様も色々と見比べてみてはいかがでしょうか。

これから暖かくなってきますが、時折寒い日もありますので、そんな日に上記の映画をお家で見られてはいかがでしょうか。

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