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夏の香りと調理技法

category : メールマガジン2018 2018.8.31 

先日アメリカのアンソニー・ボーディン氏が亡くなられました。
大学を中退後料理学校を卒業し、飲食業界に入り、様々なレストランで修行を経てマンハッタンにあるブラッスリー・レアールの総料理長となり、忙しい日々を送っていた彼ですが、ニューヨークの料理業界の舞台裏を描いた『キッチン・コンフィデンス』(2000年)の成功により、一躍有名人となりました。

そんな彼が、日本への出店時に来日した際にまったく異なる新しい世界があることを知り、これが人生の転機になったと、のちに語っています。
INSIDERという記事にアンソニー・ボーディン氏の「日本がこれから先も最高の目的地であり続ける理由」という記事があり、その中で、「日本は無限に、そして果てしなく僕を惹きつけてくる。
日本のことを少しも理解出来ていないし、
これから先もその実感は変わらないだろう。」
と語っています。

本の執筆のほか、テレビで帯番組を持つなど、食と旅をテーマに精力的に活躍していた彼が61歳という若さで亡くなられたのが悔しく思えます。

さて、料理には世界各国様々な種類が多様に存在しておりますが、基本的な調理技法は6つないし8つに分類されます。
すなわち、
・生(洗う・切る・剥くなどにより可食状態にする)
・焼く(高温気体での食材からの脱水)
・煮る(蒸す)(水分媒体での食材からの脱水)
・冷やす(干す)(冷凍・冷蔵・乾燥による凝固・脱水)
・燻す(干す)(燻煙による殺菌・脱水)
・漬ける(ほかの物質を浸透させ脱水)
が基本になっていると思います。
分類の仕方によっては温度変化という点で「焼く」「煮る」「冷やす」などがまとまったりしますが、これらの組み合わせが可食調理の原点となり、食材が多種多様な料理へと変化していきます。

食材は基本調理技法により、食べられる部位に分けられた食材は温度変化により、内包するたんぱく質や脂質、アミノ酸といった様々な成分が化学変化を起こし、また、吐き出された水分の代わりに意図した味が含まれていき、食感を変化させ食事として提供されていきます。

ここで、今回は燻すのメカニズムに焦点を当てていきます。
調理技法の中で1つだけ浮いた位置づけにあるこの燻すという技法ですが、古来より、人間が生きていくために必要な食材・料理は食べることができる状態を維持し続ける必要がある中で生まれた保存性と煙による風味付けを行うことができる技法として位置づけられています。

いずれも「生」以外の調理技法は脱水による保存効果が期待されますが、基本技法の中で殺菌成分を含む煙を食材に添加する技法がこの「燻す」です。

燻煙には食品に殺菌成分や防腐成分を浸み込ませる働きがあります。
中でも代表的な燻煙に含まれる殺菌、防腐成分として、カルボニル化合物、フェノール系化合物、有機酸があります。
燻煙の成分の種類は確かめられただけで少なくとも400種以上あるそうです。

燻煙法は、加工温度の高いものより熱燻、温燻、冷燻がありますが、熱燻は80℃を超えるような高温環境でいぶす方法で、燻煙時に食材が加熱調理されることにもなる点から手軽に出来る簡易燻煙法とされています。
燻煙時間は10‐60分程度ですが食品の保存には向かないそうです。

もっとも一般的な温燻は、30‐60℃ほどの煙で燻す方法で、燻煙時間は、数時間から1日程度であり、長時間比較的高温で燻すために水分が減少し、本来の保存食という意味での燻製ができるそうです。

冷燻は燻製液(いわゆる木酢液)に食品を漬けてその後、乾燥させる液体燻製という手間を省く手法が食品加工業界では多用されているそうで、食用に精製された木酢液は燻製液または燻液などの名称で流通しています。
ご家庭では、二重容器などにして外側に氷などをはり、食材の温度を上げないようにスモークする方法や、スモーキングガンなどで皿の上で燻製にするようなグッズも販売されております。
こちらも基本的には短時間の燻煙方法になるため、食材の保存には向かないことが多いと思われます。

スモークウッド・ウッドチップの種類も多種多様がありますが、一番メジャーどころは桜のスモークウッドでしょうか?
他にも香りのよりヒノキや、甘く上品な香りが特徴のりんご、個性的なヒッコリーなどもあるようです。

さて燻製する道具もさることながら、燻製される側の食材もみなさんいろいろなものを試されているようで、定番の肉・魚以外にも たくわん、卵、チーズ、豆腐、トマト なども燻製してしまう方もいらっしゃるそうです。

酷暑という言葉が出てくるくらいの夏本番ですが、海や山でBBQなどをする予定の方もおられるのではないでしょうか?
熱中症を含め体調や周囲環境への対策は万全に行っていただいたうえで、おいしい料理をお楽しみください。

冷燻やちょっとした風味付けなどは使い古した鍋などで煙と食材閉じ込めるだけで簡単にできるそうですので、燻製について理解を深めた私はこれから燻製に挑みたいと思います。

参考情報
・Wikipedia@アンソニー・ボーディン
INSIDER@Anthony Bourdain explains why, even after touring 80 countries, his favorite destination will always be Japan
・Wikipedia@燻製
ずっと燻製@燻製の科学
・AMAZON@スモーキングガン
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