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EPA妥結による食品業界への影響

category : メールマガジン2018 2018.2.28 

2015年4月に食品表示法が施行されて、まもなく3年となります。
市場の商品を見ているとずいぶん食品表示法に準拠した表示方法が増えてきました。
流通側等の意向もあり、猶予期間までにほとんどの表示が切り替わることになりそうです。
食品表示法施行後も、2016年4月には食品表示法の新たな製造所固有記号が制定され、2017年9月には新たな原料原産地表示制度が施行される等、毎年新たな表示に関するルールが決められ続けています。
現在、遺伝子組み換え表示制度に関する検討会が進められており、こちらでも「遺伝子組み換えでない」の任意表示に対する厳格化が決まりそうなので、今年度末~来年度にかけて新たな表示に関するルールが決まりそうです。
そして、食品添加物の表示方法についても実態調査や、その結果から見直しが必要か、検討を行うかの結論も来年度末までに出すことになっているので、もしかしたらまた新しい表示ルールができるかもしれません。
そこにあわせて、今年度中に食品衛生法も改正される予定‥と食品業界にとってはここ数年で大きな見直しがいくつもあって大変な過渡期にあるのではないかと思います。

そんな中にあって、あまり関係ないと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、昨年の12月に日本とEU(欧州連合)がEPA(経済連携協定)を妥結しました。
このEPAは労働ビザの規制緩和等の人に関するもの、外資企業が日本に入りやすくなるようなサービスや投資に関するもの、お互いの国(地域)で自由に販売できるように関税をできるだけ撤廃していく物に関するもの、こういった貿易等に関する協定のことです。
一見、特定の食品を扱うメーカーだけに関するものでは?と思うかもしれませんが、この中で食品業界としても1つ大きな制定がありました。それは「地理的表示(GI)」に関しても合意していることです。

地理的表示とは「地理的表示保護制度」のことで、伝統的な生産方法や気候・風土等の特性が品質の特性に結びついている特産品のようなものの名称を知的財産として登録し、保護する制度です。
具体的には「夕張メロン」「前沢牛」等、58の登録産品が存在します。
登録産品は登録団体に認可されている所しか使用できず、誤認を招くような表示は禁止されています。(罰則として罰金もあります)
日本独自の制度ではなく、世界各国でも適用されている制度です。

この地理的表示に合意したということは、EU側が取得している地理的表示制度が今まではEUのみでの適用だったものが日本にも適用される。
つまり、日本で販売している商品が、EUの地理的表示制度の対象となってしまう、ということになるのです。
ピンとこないかもしれませんが、EUが具体的に取得している地理的表示の一部を以下に記載します。
「ゴルゴンゾーラ」「パルミジャーノ レッジャーノ」「プロシュットトスカーノ」
チーズやハムに関してですが、聞いたことのあるものだと思います。
これらが、今後は現地で特定の製法等で製造されたものにしか使用できなくなる(日本産には使用できなくなる)、ということになるのです。
そして、その対象は対象商品そのものだけではありません。
「広告・インターネット等のサービス的な名称」での使用も規制の対象となります。
つまり、メニューの一部やキャッチコピー等に記載することも全て対象とされてしまうのです。
もちろん、それは日本の地理的表示制度で取得したものがEUでは基準を守らないと使用できない、ということでもあるのでマイナスばかりではありませんが。(今回はEU71品、日本48品が選定されました。)

なお、EUで取得されている地理的表示で「パルメザン」「カマンベール」等の名称は日本では一般化しているので使用は可能(日本産でも使用できる)となっています。
ただし、「パルミジャーノ レッジャーノ」、「カマンベール・ド・ノルマンディ」がEUの地理的表示に該当する為「パルメザン+イタリアの国旗」や「ノルマンディー風カマンベール」というデザインや表現に関しては日本産であれば誤認を与えることになるので使用できないといったルールや、翻訳や音訳したものまでもその対象となるので、デザインの一部に英訳したもの等を記載することにまで注意をする必要が出てきます。

妥結したことにより、政府は2019年中のEPAの発効を目指しています。猶予期間としては7年間あるようなので、まだ7年もあるのではないか‥と思われるかもしれませんが、上記にあげた食品表示法関連や食品衛生法の改正に関しては2020年以降に次々と猶予期間が終了していきます。
前持って素材の見直し、あるいは表現等の見直しを進めておかないと、その時になって大変なことになってしまうかもしれません。

~参考資料~
日EU・EPAにおける地理的表示(GI)の取扱いについて(農林水産省食料産業局知的財産課)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/designation2/attach/pdf/index-8.pdf

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