トランプ大統領と日本の食糧輸入へ与える影響
2016年は英国のブレグジット(EU離脱)、トランプ候補の米大統領選勝利と大きな転換がありました。
また、2017年は各国の首脳選挙が多く、さらなる変化が起きるのではないかと危惧されています。
そこで、トランプ大統領就任により日本に、特に食品にどのような影響が起こりそうか考えてみました。
トランプ大統領の考え方は「米国第一主義」です。
輸出を増やしラストベルトと呼ばれる重工業地帯へ有利となる政策をとることが考えられます。
貿易については多国間協定ではなく、二国間協定を重視するとしており、TPPから脱退する大統領令に署名しました。
現在のところ分かっている貿易姿勢をまとめると下記のようになります。
①輸出の拡大
②二国間協定の締結
①輸出の拡大
米国が輸出を有利にするには、ドル安に誘導することが効果絶大です。
そのため、ドル安に誘導する可能性が高いと考えられます。
その結果として日本では円高となるでしょう。
そうすると、日本国内では輸入品の価格が下がるため加工食品業界としては原材料が安くなります。
②二国間協定の締結
仮に米国がTPPに批准しなかった場合、日米間で自由貿易協定(FTA)を締結しようという動きが強まるでしょう。
農畜水産物のみに注目すると「トウモロコシ、大豆、豚肉、牛肉、果実(生鮮・乾燥)」(2015年の輸入金額順)、そして日本が高関税をかけているコメの対日輸出が増えるような条件になることが予想されます。
しかし、トウモロコシは日本国内で飼料になる割合が高く、豚肉や牛肉の輸出を増やすためにも値上げがありうるのではないかと思います。
また、大豆(68.9%)、小麦(50.8%)も高い割合で米国からの輸入に依存しており、注意が必要です。
TPPに批准するかどうかは米議会でまだ審議されていないため、どのようになるかは不透明です。
しかし、米議会も上下両院で共和党が過半数を占めており、共和党のトランプ大統領には追い風です。
米議会の動向からは目が離せません。
米国の貿易赤字額(7,371億ドル:2015年)は中国3,674億ドル、日本703億ドルとなっています。
米国の貿易赤字に占める中国の割合が高く、米国にとって対中赤字の縮小が喫緊の課題となります。
そのため、1980年代の日米貿易摩擦のころのように対日貿易がやり玉にあげられる可能性は低いでしょう。
トランプ大統領はtwitterでの情報発信が多く、twitterでの発言が市場に影響を及ぼすこともあります。
米国政府高官の発言だけでなく、トランプ大統領のtwitterにも注目する1年となりそうです。
参考資料
[農林水産物輸出入概況(2015年)] 統計表(確報)(農林水産省2016年3月)
米国経済と日米経済関係(外務省 2016年6月)