「フォルクスワーゲン問題と食品添加物」
category : メールマガジン2015 2015.10.31
欧州では近年、大気汚染が問題となっております。 あまりにも酷いため、フランスでは自動車の規制にまで踏みきったぐらいです。 環境先進国であるはずの欧州の大気は、なぜここまで汚れてしまったのか? 誰もが薄々ではありますが、自動車特にディーゼル車がその原因であることを感じていました。 欧州では二酸化炭素(CO2)削減のため、CO2排出量の少ないディーゼル車を優遇してきましたが、 ディーゼル車は窒素酸化物(NOx)や微粒子状物質(PM)を排出しますので、 そのあたりをきちんと処理しておかないと排ガス基準には適合しないことになっております。 厳しい排ガス基準をクリアしているはずのディーゼル車はその性能を満たしているか? 以前からその性能をいぶかしく思っている人は多数いました。 ここに来て、その原因が判明しつつあります。 フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れの事件が発覚したからです。 もともと、VWの「クリーンディーゼル車」については、その性能について疑念を持たれており、 ライバルメーカーも指摘していたのですが、欧州当局は積極的に調査しませんでした。 自動車産業は裾野が広く、多大な労働者を吸収できるので、薄々気づきながらも当局は 口出しできなかったのかもしれません。 果たして不正を行っていたのはVWだけなのか? 走っているディーゼル車すべてに疑念の目が持たれており、他の自動車メーカーは火消しに躍起となっております。 欧州によるディーゼル車優遇政策は、それを見直すことは必至となるでしょう。 今後、欧州は経済と環境の両面で多大なコストを払わなければならなくなりました。 現在、日本と欧州の間で、経済連携協定(EPA)締結に向けた交渉を続けていますが、 双方の主張の隔たりが大きく難航しております。 日本は主に自動車などの関税を撤廃するよう要求していますが、欧州はといいますと、 食品の関税削減や規制緩和を主張しています。 自動車部門については、VWの不正発覚により、燃費のよいガソリン車のある日本車が見直される可能性が高く、 もしかすると関税が撤廃されるかもしれません。 現在欧州が日本車に10%の関税をかけていますが、これが無くなると欧州の人々は 日本車を買いやすくなります。 欧州が自動車部門で譲歩するとなると、日本も譲歩しなければなりません。 そのターゲットは食品部門のような気がします。 欧州は食品の関税削減とともに食品の規制緩和を主張していますが、この規制緩和とは食品添加物の取り扱いについてで、 使用基準の緩和や使用を認める対象食品の拡大を求めています。 これらは安全や健康に深く関わっており、安易に妥協することはできませんが、 交渉いかんによっては、日本政府が譲歩する可能性も考えておかなければなりません。 その際は色々と食品の表示基準も変わってくるかと思いますので、準備は早くからしておきたいものですね。