空飛ぶ揚げ油
向暑の候、皆様いかがお過ごしでしょうか。
朝晩は肌寒さを感じ、昼間は暑いなど気温差が激しい日が続き、体調を崩しがちです。
くれぐれも体調にお気をつけ下さい。
毎日のように、日用品、食料品の値上げラッシュの報道が続いております。
トイレットペーパー、小麦粉、卵、乳製品・・・その中でも注目されています調理に欠かせない食用油。
食材を炒める時は勿論、フライドポテト、から揚げ、エビフライなどの揚げ料理には欠かせないものです。
食用油の値上がり率は驚異の約26%にまで達しています。
そんな食用油ですが、飲食店などで調理に使用された大量の「廃食油」が現在お金に変わるような状況になりつつあります。
え?食用油(未使用)の間違いではと思われるかもしれませんが、使用済みの「廃食油」の方です。
以前では廃食油はお金を払って回収してもらうのが当たり前でしたが、現在では無料での引き取りだけではなく、買い取りをされるまでになっているといいます。
昔はただのゴミだったものが今ではお金に変わるとは予想できませんね。
全国油脂事業協同組合連合会によると、日本で発生する廃食油は年間で約52~54万トンとされており、そのうちの外食産業、食品産業などの事業系から出てくる廃食油はほとんどが回収され、再利用されているようです。
廃食油で何ができるの?と思われますが、
・家畜の飼育餌(栄養素が調整された配合飼料などに使用されるそうです)
・石鹸やインクなどの原料
・海外への輸出
・ボイラー用燃料などの再生可能エネルギー燃料
などに利用されます。
石鹸への再利用は、小学校の家庭科の授業で聞いた事がある方は多いと思います。
中には夏休みの実験で廃食油から石鹸を作られた方もいるかもしれません。
個人的に鶏などの家畜の餌への利用は少し驚きました。
集められた廃食油のほとんどが国内で飼育餌やインクなどの原料に再利用されていましたが、今では3分の1が燃料向けとして海外に輸出されているようです。
その結果、廃食油の取引価格はこの1年で急増し、およそ3倍近くと驚異の価格になったようです。
かつてはゴミとされていた使用済みの食用油は海外で何に利用されるかと言いますと、海外へ輸出された廃食油は航空機に使用され、ジェット燃料として再利用されます。
フライヤー内でじゃがいもやエビ等を揚げていた油が空を飛びます。
廃食油から製造される燃料は「Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)」(略称:SAF)と言う燃料に生まれ変わります。
こちらの燃料は従来のジェット燃料と違って原料に石油が使われません。
航空機は鉄道などの他の交通機関よりも多く二酸化炭素を排出していることから、環境保護団体などから厳しい視線を向けられています。
このため、民間航空機の運航ルールを定める国際民間航空機関(ICAO)は2022年に国際線の航空機が排出する二酸化炭素について2050年には実質0にするという目標を出しました。
確かにここ数年だけでもスマホが普及したり、自動運転機能が付いた車が発売されたりなど技術は恐ろしい程進みましたが、発表から28年で、二酸化炭素を0へとはなかなかハードルが高いのではないでしょうか?
航空会社は燃費の良い機体の導入や効率を意識した飛行計画などの対策を練っているようですが、残念ながらこれらの目標達成への貢献割合は約20~30%程度と計算されているようです。
そこで廃食油から製造されますSAFが注目されました。
元々の原料が、成長の際に二酸化炭素を吸収する植物なので、製造工程も含めた全体的な量から見ても、従来のジェット燃料よりも約80%程度の二酸化炭素の排出量を削減できると考えられています。
そのため、従来のジェット燃料をSAFへ置き換えれば削減目標の大半を達成できるのでは?と期待されています。
リサイクルと聞くと新聞紙などの古紙が新しい紙になったり、アルミ缶などの缶が自動車部品になったりなどが思い浮かぶと思いますが、技術の進歩でより本来ゴミである廃食油を環境に優しい燃料へと再生するまでに進化しました。
資源にはどうしても限りがありますので今後も再生先の選択肢が増えて色んな事に活用されるといいですね。